30代女性の1000万借金ストーリー:債務が増えていくまで【依頼者からの借金体験記】

最初の融資ですし、大事をとって返済期間を長く設定してもらったおかげで、月々の返済額は3万円以下。普通のOL時代もクレジットカードの返済額はそれぐらいでしたので、何かあっても返せない金額ではないなと返済表を眺めて気が緩んだのを覚えています。

さあ、晴れて銀行からお金が借りられた私は、その金額は「借りた」だけであって後から返さなければならないという気持ちよりも、自分のお金になったような感覚で、「これで一気に買い付けられる」という気持ちが大きくありました。

アパレルショップを経営している友人と打ち合わせをして、現地でショーを観終わった場合の問屋街なども教わりいざ買い付けへ。

「売れる」と思う商品がなければ、他で探すことを考えればよかったのですが、とにかくこのために借りたのだから、と借りた金額ほとんどをつぎ込む勢いで商品をオーダーし、振込の手続きをとりました。

でもそのときは、たまたま運よく買い付けた商品がその年の流行りと重なり、売り上げはドンドン上がっていったのです。

月の売り上げが100万を超えるようになってくると、なんだかすべてが自分の収入のような気になり気が大きくなってきます。

本来なら100万程度の売り上げでしたら、原価、経費、商品が売れずにセールにした場合などを考慮に入れると自分の手取りはOLの給料に毛が生えた程度。でも、大きな単位の金額が動くことにばかり目がとられ、細かい計算をおろそかにしてしまい、もともと遊び好きな性格がアタマをもたげた私は生活がどんどん派手になっていきました。

海外仕入れで知り合った仲間と食事するときは見えを張って高いお店。ワインをボトルで何本も頼んでも、「経費で落とせるから」とうそぶく仲間に影響されて、青山や六本木のお店に顔を出すようになりました。

そもそも自営の場合、「経費」とは、会社勤めの方のように収入と別のポケットから出てくるものではなく、利益があってこそ使える金額なのです。それなのに、毎月の利益がいくらかさえもロクに把握していなかったのにも関わらず、OLだったら自分のお小遣いから払わなければならない飲み代も「経費」で払えるという点に有頂天になり、週に数回は飲みに出かけるようになりました。

そんな生活が続けば当然そのうち破たんにまっしぐらだったのでしょうが、そうなる前に運が良かったのか悪かったのか、また融資の誘いが来てしまったのでした。売り上げが好調で遅れずに返済していたおかげで信用金庫担当者の覚えもよく、「ここで一気に在庫を増やしたらどうですか」と提案されました。

拡大していくことに母親は大賛成。今回は金額も増えるので信用保証協会に保証をしてもらいながら、母親を連帯保証人として立てる、ということで融資の話がトントン拍子に進みました。

今回は倍の200万です。前回の融資分も含めると返済額は月に6万程度になりますが、売り上げを上げればなんとかなると借りることにしたのです。

その頃、アパレル関係で知り合った男性の友人が何人かおり、皆それぞれ30代で、違った形態で会社を経営していたのですが、男性同士が集まると見えを張りあうというのか、「お前今いくら借りてんの？」のような借金の金額の話になることが往々にしてありました。

そういった場での話は「自分は何千万」など、まるで借金している金額が事業の大きさにつながるような口ぶり。私も、「信用がなかったら貸してくれないんだから、借りられるうちに借りておいた方がいいよ。」という、今だったら考えられないようなアドバイスを受けていました。

もちろん時代とは関係なく、堅実に事業を営んでいらっしゃった方も多くおられると思います。ただ、私は自分で好んでそんな輪に入っていったんだと思いますが、まわりにはその頃、結婚して家族で堅実に幸せに暮らすというよりは、ボーイフレンドやガールフレンドもしょっちゅう変わり、派手に飲み歩く友人が多くいたのです。