2009年9月の知らなきゃ損する債務整理関連ニュース

2009/09/30私的整理に着手したアイフル それでも険しい前途

業績不振の消費者金融大手アイフルが私的整理の「事業再生ADR」の手続きに着手し、主力取引行に約2800億円の債務の返済猶予を要請した。店舗・人員の大幅削減などリストラを進め、再建を図りたい考えだが、貸金業法改正に伴う過払い利息返還請求の急増など経営環境は厳しく、「いずれ法的整理も視野に入る」との観測も浮上している。

利用者から過払い利息の返還請求が急増

業界が苦境に陥った引き金は多重債務問題を契機に改正された貸金業法(2007年から段階施行)。上限金利引き下げで利用者から過払い利息の返還請求が急増し、各社は返還に備えた貸倒引当金の積み増しで損失が拡大。10年6月には融資を年収の3分の1以下に抑える総量規制も適用され、各社は前倒しで融資を圧縮し、市場も縮小している。

各社は07年3月期決算で軒並み大幅赤字に転落し、アイフルも当期赤字が4000億円を超えた。08年3月期決算はアイフルも含めて黒字を回復したが、そこに米国発の金融危機が発生し、苦境に追い打ちをかけた。米GE(ゼネラル・エレクトリック)はレイクを新生銀行に売却し、ディックを展開してきた米シティグループは撤退を表明した。

国内大手4社も、プロミスは三井住友フィナンシャルグループ(FG)、アコムは三菱UFJFGの傘下に入った。両社は銀行の信用力をバックに市場から調達する資金の金利は抑えられているが、銀行傘下でないアイフルと武富士は金利が高く、収益が圧迫された。同じノンバンクのSFCG(旧商工ローン)は09年2月に破綻し、アイフルの09年3月期決算も黒字が42億円にとどまった。

「本来は救済合併を仰ぐしかないが、引き受け手がいるかどうか」

アイフルは資金繰り悪化による経営不安説がたびたび流され、窮状の打開策に選んだのが事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)。これは、国が認定した民間の第三者機関が仲裁役となり、再建案を策定する。従来の私的整理よりも協議がまとめやすく、法的整理と比べ「倒産」の印象が受けにくい。08年秋から運用が始まり、コスモスイニシア(旧リクルートコスモス)などやラディアホールディングス(旧グッドウィル・グループ)が利用した。アイフルはグループ全体の正社員をほぼ半減の約2500人とするなどのリストラ策をまとめ、主力行の住友信託銀行やあおぞら銀行などに債務返済猶予の同意を取り付けたい考えだ。

ただ、アイフルは10年3月期連結決算で3100億円の大幅赤字に陥る見通し。主力行は「メーンバンクとして支える」とはしているが、「ビジネスモデルとしての将来性はない」(幹部)との厳しい見方がくすぶる。米格付け会社、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、アイフルの格付けを実質的な「デフォルト」に引き下げた。市場関係者の間では「私的整理を終えたとしても、生き残っていけるのか」「本来は救済合併を仰ぐしかないが、引き受け手がいるかどうか」といった見方がささやかれ、最終的に法的整理に追い込まれる可能性が取りざたされている。

2009/09/24アイフル、正社員2000人削減の大リストラ

経営再建中の消費者金融大手アイフルは2009年9月24日、グループの正社員約2000人を削減するリストラ策を発表した。アイフルの正社員約2700人の中から1300人程度、グループ会社ライフの正社員約1400人の中から700人程度の希望退職者を募集する。また、アイフルの有人店舗を96店から30店程度へ、無人店舗を837店から650店程度に減らすほか、ライフの営業支店11店全てを閉鎖するなどする。

2009/09/18アイフル私的整理へ 過払い金猶予の「お願い」通じず

消費者金融大手のアイフルが、私的整理の手続きに入る。債務総額は3000億円前後。経営再建に向けて住友信託銀行とあおぞら銀行などの銀行団に対して、債務の返済猶予などを求めていく。改正貸金業法への対応や過払い利息の返還請求の急増で収益が悪化、資金繰りに行き詰まった。

事業再生ADR、法的整理の一歩手前

アイフルは、私的整理の手法の一つである「事業再生ADR」(裁判外紛争解決)を活用した経営再建に踏み切る。同社によると、「現在、事業再生計画を協議中で仮受理の段階。連休明けにも正式に決まる」(広報部)と話す。再建計画は店舗や人員削減を柱とし、事業を縮小する模様だ。

一方、住友信託やあおぞら銀行など銀行団には返済猶予を求める。一定期間、債務残高を維持してもらい、さらに返済期限を延長してもらう。ただ、債務免除や貸出債権の一部を株式に振り替える「デット・エクイティ・スワップ」には踏み込まない。事業再生ADRの実施には、債権を有するすべての銀行の同意が必要なので、慎重に協議を進める。

こうした事態まで追い詰められた原因についてアイフルは、改正貸金業法の施行で貸出金利の引き下げを余儀なくされたこと、それに伴い貸出審査を厳正化したことで利用者が離れ営業収入が減ったこと、過払い利息の返還請求が相次いだことをあげた。

なかでも、過払い利息の返還請求は「高水準で推移したことが響いている。このまま続くようだと法的整理を選択せざるを得ない状況にまで追い詰められてしまう。それは避けたかった」と説明する。

営業収入が減ったうえに、過払い利息の返還という「支払い」が急激に増えたことで一気に財務状況が悪化。さらに格付けの引き下げで、資金の直接調達にも支障を来たすことになり、「負」の悪循環に陥った。

銀行の「後ろ盾」がないと苦しい

「過払い元金を50%にしてもらえないですか」
「100%お支払いしてもかまいませんが、5年間の分割払いにできないですか」——。

アイフルはこの夏、こんな「お願い」を、過払い訴訟を手がける弁護士や司法書士の事務所に出向いては頭を下げていた。

ある司法書士は、「かなりマズイな、と思った」と明かすが、実際に銀行融資が止まり、このままいくつもの過払い訴訟を続けることはできない状況になりつつあった。

アイフルの過払い金の支払額は、09年3月期では消費者金融大手4社の中で一番少ない550億円だった。今期は1634億円の引当金を取り崩して対応するとみられていたが、業界内では「それでも不足する」(消費者金融の関係者)とみていた。

アイフルは「お願い行脚」で過払い利息の返還を先送りし、他社に比べて支払金額を抑え、資金繰りを調整していたようだ。

いま、消費者金融業者の資金繰りを支えるのは、メーンバンクしかない。過払い利息の返還請求に苦しんでいるのはアイフルだけでなく、「高止まりしていて、どの消費者金融も似たり寄ったりの状況にある」(業界関係者)という。

そうなると、三菱UFJ系のアコムや、三井住友系のプロミス、新生銀行グループのレイクのように、銀行の「後ろ盾」があるところは心強い。半面、武富士はつらいところだ。

アイフルの余波で、武富士の2009年9月18日の株価は前日比44円安の420円。「銀行系」のアコムやプロミスよりも、下げ幅は大きかった。


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