債務整理コラム

「わかっちゃいるけど」のそれぞれの段階 2

「IT長者」の本は役に立つ?

小手先の技術で一発逆転を狙えば失敗する。これは何も借金だけに限った話ではありません。あらゆる事柄にあてはまります。たとえばインターネット界隈でちょくちょく目にするIT長者。ネオヒルズ族などといわれてもてはやされ、札束をドカンと山積みにした写真などを見たことがある人も多いことでしょう。

では、彼らの講演を聞いたり、著作を読んだりすることでわたしたちもお金持ちになれるか。なれません。彼らのビジネスが虚業、いわゆるマルチ商法のようなハッタリではないとしても、そこで学んだことはわたしたちの人生には役立たないのです。

なぜなら、わたしたちは凡人だからです。IT長者にしても、何十・何百万人もの人が挑戦してきた中で、ほんの数人が宝くじのようにうまくリスクを抜けて、大金持ちになりました。だからわたしたち凡人が、彼らのやり方をマネて起業したとしても、まず100%の確率で借金の山だけを残して倒産します。

それなのに多くのサラリーマンや起業を目指す大学生たちは、ひきも切らずに彼らの書いた本を買っては読み、講演が始まれば飛んでゆきます。そしてそんな会社員や学生たちですら、「これでうまくいくのかなあ」と心のどこかで薄々思っているのです。

「一般解」と「特殊解」

わたしたちは自然を模して生きている

経営コンサルタントとして名高い岡本吏郎氏は、ビジネスで成功するための考え方に「一般解」と「特殊解」という言葉を用いています。

一般解とは万人にあてはまる考え方、やり方のこと。特殊解とは応用は利くけれど、誰もが扱えるものではないということです。

この「特殊解」とは要するに一発逆転のこと。たとえば「ナニワ金融道」を読んで借金の踏み倒しの仕方を学んだとしましょう。読んだ直後であれば自分の借金の状況と照らしあわせてなんだか応用が利くような気がするかもしれません。そうして、もしかしたら一万人に一人くらいは踏み倒しができる人もいるかもしれません。

でも、その一万人に一人の踏み倒し成功者が「わたしはこうして借金を踏み倒した」と声高に喧伝し、安価でやり方を教えたとします。そうしたら、その人はお金の面でも成功者になれるかもしれません。でもお金を払ってそのやり方を学んだ人は踏み倒しに成功するでしょうか。成功率は一万分の一以下。柳の下に二匹目のドジョウはいないのです。失敗するに決まっているのです。

それに引き換え、一般解というものは実につまらないものです。当たり前過ぎるくらい当たり前のことです。

お金を稼ぎたければどうすれば良いか。働くことです。人よりも長時間一生懸命働くことです。人の上に立ちたければどうすれば良いか。学ぶことです。学生であればもっと勉強して良い成績を取って良い学校に進学し、良い就職先に就くことです。社会人であれば、人が遊んでいる時間、自分はコツコツと勉強し、資格を取ったりしてステップアップすることです。それしか道はないのです。

では、ひるがえって借金問題にはどう対処すべきか。これも「踏み倒し」だの「借りパク」だのといった特殊解は使えません。使えばサラ金に追われるか、戸籍もない生活を送ることになるか、もしくは逮捕されるかのいずれかに陥るためです。

一般解で借金を考えると、これは2つの方法があります。一つはコツコツと働いて返済をすること。もう一つは債務整理をすることです。ただ、借金問題に関しては、このいずれにも共通しているさらなる一般解が存在します。

それは計画を立てることです。

計画こそが借金整理の肝心要

計画というと堅苦しいものに聞こえるかもしれません。自由を奪われるような印象があるかもしれません。しかし事実はまるで逆。自分が将来どうありたいかに向けて、自分で目標を立てるのです。そして返済のための計画の第一歩には家計簿の存在があげられます。お金というのは、入ってくる金額よりも出てゆく金額が多ければ赤字になります。お金が足りなくなるのです。お金が足りないのに生活をしなければいけないのであれば、人は当然借金をしなければなりません。

最初の計画のポイントはまさにここ。自分で働いて返済をするにせよ、債務整理を考えるにせよ、まずは収入と支出の両輪に目を向けましょう。いらないところで出費があるのではないでしょうか。たばこを吸いながら、お酒を飲みながら借金が返せないと嘆くのはおかしな話です。余計な出費を慎むことを一ヶ月だけやってみましょう。赤字であった生活費が案外黒字に転換するかもしれません。その記録をキッチリつけてゆく。家計簿とは単にそれだけのものです。難しく考える必要などありません。

そしてもう一つ。倹約生活を果てしなく続けてゆくのは拷問のように思えるかもしれません。だからこそもう一つ大切なのは、家計における再建計画と同時に人生の計画も立てること。

何歳から何歳までの間に借金をゼロにする。その後何年間で何百万円の貯金にする。これらはけっして難しいことではありません。ただ漫然と倹約をしても途中で息切れしてしまいますが、漠然とでも良いので計画を立ててそれに従ってゆくだけで、今よりもずっと良い生活になるはずです。

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