債務整理コラム

「わかっちゃいるけど」のそれぞれの段階 1

一発逆転を求めていませんか?

借金の返済が苦しくなってくると、誰もが「なんとかする方法はないものか」と心の奥底で思い始めます。その「なんとかする方法」が法律に則った債務整理ならば良いのですが、大抵の人がまず思うことは、借金をどう踏み倒すか、もしくは返済を繰り延べできる方法はないかと言ったような内容になるはずです。

犯罪被害である闇金の場合は話が別ですが、銀行や消費者金融など、正規の金融業者から借入をして債務超過に陥った場合、取れる手段は2つしかありません。1つはアルバイトでも何でも良いので収入を増やす手段を作り、コツコツと働いて返済をしてゆく。もう1つは法的な手続きを用いて債務整理を行う。このいずれかしかないのです。

ところが、大抵の人は借金で苦しむとほぼ確実に「一発逆転」の手法を探し出します。それはたとえば、サラ金業者との会話を録音して「脅された」とクレームを入れてみたり、または支払い回数をさらに繰り延べするためにリボルビング払いにしてみたり、もしくは金利の低い銀行を探して借金の一本化を考えてみたりといった具合です。

結論から言いますと、これらはすべて失敗します。サラ金会社はクレーマー慣れしています。たとえば小さなサラ金会社の社員が、かつてこんなことを言っていました。

「結構、ちんぴらのような連中も借金しにきますよ。取立の電話をしたら今殺しに行くとか平気で脅してきますね。こっちは別に平気です。鼻で笑っていつでも来いって言うだけ。来た試しがないけどね」

コワモテの零細サラ金などは、殺人予告すら鼻で笑えるくらいクレームは日常茶飯事。逆に大手のサラ金にクレームをつけてやろうなどと考えれば、こちらは債務者の方が告訴されかねません。

多重債務を一本化やリボ払いに切り替えようと試みることも、一発逆転を狙うという意味では同様です。銀行融資などで一本化が図れる段階であれば、その時点でむしろ債務整理をしてしまうことです。そうすれば、まず大抵の人は借金地獄から抜け出せます。それにも関わらず多重債務の一本化をすると、まず九割方の債務者が後の返済で行き詰まります。リボ払いに至っては一気に金利が引き上がるため、長くても数カ月程度、破産か夜逃げを繰り延べしただけに過ぎません。

借金の返済で考えてはいけないことは「一発逆転」です。

自分は「特別」の感情を排除する

どんな人間でも、自分は特別です。もちろん自分が死んでしまえば、すべてはそれっきり。だから自分を大切にしたいと思う気持ちはとても大事でもあります。

でも、同時に心のどこかで自分は「特別」な人間だという意識を持っていないでしょうか。周囲の人と比較して、自分だけは特別に運が良い。何か突発的な事態が生じても最後の最後、自分だけは何か運良く切り抜けられる。心のどこかでそう思っている節があるのではないでしょうか。

とても厳しいことを言います。あなたは何も特別ではありません。それぞれの生きてきたドラマがあるにせよ、単なる普通の人間です。凡人です。自分のことを天才だと思うのは自由ですが、99.9%の人は違うでしょう。

特別な人間ならばそれは一発逆転が狙えるかもしれません。でも凡人がそれを行ってもデメリットしか生じません。それなのに、こと借金に関して、債務者は、誰もが声を揃えて「失敗する」と断言する方向へとなぜか行きたがります。

その理由はかんたん。「一発逆転」は口当たりが良いからです。夜逃げをするにせよ、踏み倒しするにせよ、やることは楽ちんです。逃げれば良いだけ。開き直れば良いだけ。でも、長い目で見るとそれは失敗します。人生についてしっかり考えていないからです。

野口英世やキュリー夫人のような偉人の伝記を読んだことがある人はいるはずです。戦国武将が好きな人なら武田信玄や織田信長の大河ドラマを見たことはあるでしょう。

伝記や大河ドラマは偉人が小さな頃から、最後に亡くなるまで、テーマとなる人の一生を語っています。私たちもそれとも同じです。人間は今この瞬間を生きているだけで人間なのではありません。生まれて成長して、やがて老いて亡くなるまで。この数十年という長い一本のトンネルを通って、そのひとまとめではじめて人生になるのです。

それにも関わらず、口当たりが良いという理由で、今逃げ出してしまえばどうなるか。当然、未来の自分が困ります。

わかっちゃいるけど、の問題なのです。

最初の計画のポイントはまさにここ。自分で働いて返済をするにせよ、債務整理を考えるにせよ、まずは収入と支出の両輪に目を向けましょう。いらないところで出費があるのではないでしょうか。たばこを吸いながら、お酒を飲みながら借金が返せないと嘆くのはおかしな話です。余計な出費を慎むことを一ヶ月だけやってみましょう。赤字であった生活費が案外黒字に転換するかもしれません。その記録をキッチリつけてゆく。家計簿とは単にそれだけのものです。難しく考える必要などありません。

そしてもう一つ。倹約生活を果てしなく続けてゆくのは拷問のように思えるかもしれません。だからこそもう一つ大切なのは、家計における再建計画と同時に人生の計画も立てること。

何歳から何歳までの間に借金をゼロにする。その後何年間で何百万円の貯金にする。これらはけっして難しいことではありません。ただ漫然と倹約をしても途中で息切れしてしまいますが、漠然とでも良いので計画を立ててそれに従ってゆくだけで、今よりもずっと良い生活になるはずです。

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