債務整理コラム

「億万長者」と「債務者」のたった1つの違い

お金持ちの集まりに顔を出したことがあるでしょうか。おそらく行ったことがない人が大半だと思います。「お金持ちの集まり」などといわれると、たとえばテレビでやっているような100グラム3万円の和牛ステーキだの、一本50万円の高級ワインだのを惜しみなく振る舞うパーティを想像するかもしれません。

しかし実際のところはまったく別。何もない会議室の一室で紙コップに入ったコーヒーだけが振る舞われることもあれば、ときにラーメン屋の片隅でボソボソとしゃべっていることもあります。そんなことのどこがお金持ちだ、とお怒りになる方もいるかもしれませんが、ここで問題になるのは会話をしている場所ではありません。会話の中身です。

お金持ちというものは、どちらかといえばドライな人が少なくありません。今まで熱烈に話し合いをしていたにも関わらず、ふと、儲からないな、時間の無駄だなと思えばその場で話題を打ち切ってしまうこともしばしばです。

たとえばお金持ちの人が四人集まっていたとしましょう。この中の一人、Aさんが事業の不振にあえいでいたとします。すると、にわかにDさんが「じゃあ、自分はそろそろ時間なので」と席を立ってしまいました。Bさん・CさんはAさんとビジネスパートナーでもあるわけですが、その分、むしろ険しい顔で「悪いんだけど今回の売掛、早めに支払ってもらえるかな」と始まってしまったのです。

彼らはなんとドライで冷たいのだろうと受け取られるかもしれません。確かにそれはそうです。Aさんが経済的な困窮を露呈させるや否や、弱り目に祟り目とばかりに借金の督促を開始するなんて、とても人間の所業とは思えないはずです。

では、もう1つ、今度は借金で首が回らない四人組がいたとしましょう。この四人は、みんなが同じように借金があったり、ローンの支払いに苦しんでいたり、生活費に困っているような状況です。彼らもお金持ちと同じように缶コーヒー片手にみんなで集まっていました。

Aさん「実は今月、借金の支払いに詰まっちゃいそうでさ」

そうAさんが口火を切ると、Bさん・Cさん・Dさんもわかるわかるとばかりにうなずきます。

Bさん「あー、私もローンの返済が苦しいんだよねー」
Cさん「景気悪いもんね。税金ばっかり上がって」
Dさん「つらいのはお互いさまだよ。がんばろうね」

はじめは暗い顔でいたAさんも、賛同を繰り返す周囲の声に次第に生気を取り戻してきました。また他の友人たちも「苦しいのは自分だけじゃないんだ」との思いをわかちあうことができて、みんなが朗らかな顔になったのです。こうして数時間後、彼らはみんな意気揚々とその場を後にしたのでした。

こうして比べてみるとお金持ちグループよりも、借金グループの方が精神的にはずっと楽と思えるはず。実際、経済的に恵まれている人よりは恵まれていない人たちの方が、助け合いの意識や仲間意識が強いのは多くの人の知るところといえるでしょう。

ところで先のお金持ちの人たちの話には続きがあります。Aさんは苦しい資金の中でも、ビジネスパートナーであるBさん・Cさんに支払いを約束しました。すると今度はBさん・CさんはAさんの事業の不振の理由について色々と質問を始めたのです。

プライドが傷つくことを恐れてか、はじめのうちは言いよどんでいたAさんも、Bさん・Cさんの真剣な声にほだされて、やがてぽつぽつと話を始めました。するとBさん・Cさんはそれぞれ眉間にしわを寄せたり、腕組みをしたりして考え込み、やがて各人とも、自分なりの解決案を出し始めたのです。Aさんとしてもそれぞれの意見にしっかりと耳を傾け、最終的には現状の打開策を見つけたことで目を輝かしながら立ち上がったのです。

かたや借金グループの方はそれぞれが次の日の朝、目が覚めると、また再び自分の手元の資金繰りに思いを馳せ、重い溜息を吐きました。

繰り返しますが、億万長者の集まりと債務者の集まり、後者の方が圧倒的に気楽なのは間違いありません。しかし、よく考えてみましょう。気持ちをわかちあうことで、事態は解決するでしょうか。億万長者は感情的な共有などは一切しません。お金に関しても非常にシビアです。そのかわり、億万長者たちとて別に悪人なわけではありません。彼らとしても、どうすれば今の状況からAさんが抜け出せるかをポンとアドバイスしてくれたのです。講演会やセミナーなど、場所によってはこのようなアドバイスを得るために何十万円も支払う人もたくさんいることでしょう。それをBさん・Cさんは気前よく出してくれたのです。Aさんもこの点がわかっているからこそ、うまく事態を打開できた暁には、Bさん・Cさんにお礼をすることになるはずです。

億万長者は「目的」に目を向けます。かたや債務者は「感情」の共有を求める傾向があります。同情では借金は減りません。またお腹も膨らみません。現実を直視する力を持つこと。そうすれば、状況はみるみるうちに変化してゆくことは間違いないのです。

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