債務整理コラム

借金問題解決後は「荒野の標識」に注意する 2

借金の返済が苦しくなった時点で債務整理の相談をするか、何だかんだと理由をこねまわして現実から逃げることは後に雲泥の差を生みます。さらにこの時点でもうひとつ忘れてはいけない心構えがあります。これは形の上では同じ債務整理であっても、その後の債務者の生活に甚大な影響を与える選択肢です。

それは

1 自分から進んで債務整理を考えたのか
2 いやおうなしに債務整理をせざるを得なくなり、イヤイヤ行ったのか

この心構えの差です。
では借金問題において、なぜ心構えが大事なのか。

債務整理を行えばたとえそれが任意整理であれ、自己破産であれ、信じられないほど肩の荷が下りて生活が楽になります。毎日の暮らしが楽になる。仕事を探しにいける。家族と旅行にいける。ときどきはおいしいものを食べに外食をしにいける。借金の返済に行き詰まり、鬱々とした気分で頭を抱え込んでいた頃とはまるで天国と地獄のように様相が変わるのです。それも一瞬のうちにです。

良いことだらけ。債務整理はそう断言しても間違いではありません。ところがこの「良いことだらけ」が実は不思議な作用を及ぼすのです。多重債務者、とくに返済額が多かった人ほど、債務整理を行うと、これまでとあまりにも違う幸せな生活に対し、心のどこかでこんな懸念を抱きます。

「幸せ過ぎてこわい。こんな生活でいいのだろうか。いつか破滅が来るかも。天罰が下るのかも」

これは債務者であった人が意識してそう思うのではなく、幸せな生活が続くとどこからともなくわきあがってくる想念のようです。そしてこの想念が大変なくせものなのです。

人は、その人が四六時中考えている通りのものになります。先の「荒野の標識」を思い出してください。何もない荒野にぽつんと目立つ標識があれば、それを見ている人の心の中は標識でいっぱいになります。すると結果はどうなるか。自然と車は引き寄せられ、標識に激突してしまいます。人は思っていること、目に映っているもの、考えていることを形にするのです。不幸を考えれば不幸になります。他人の不幸でもそれは同じです。宝くじに当たってもすぐに使い果たし、数年後には借金と不幸の極みのような生活を送っている人のパターンなどはこの典型例といえるでしょう。彼らは贅沢を謳歌しつつも、その贅沢を恐れ、心のどこかで幸福を拒んでいたのです。

同様に「借金がなくなり、快晴が続くような幸せな日々がずっと続いている。本当にこれでだいじょうぶだろうか」と胸の裡(うち)が疑念でいっぱいになれば、心は再び借金苦にあえいでいた頃の自分へと引き寄せられてゆきます。端的にいえば「過去の自分」が足を引っ張っているのです。

このとき訪れる出来事は債務者だった方、個々人によりさまざまです。しかし、この「天の試練」ともいえるような出来事。これを見事に乗り越え、過去の自分からの脱却が果たせると人生が目に見えて一段階レベルアップします。借金漬けだった生活は借金のない順風満帆の生活へと変わり、すぐにそれが当たり前のものとなるでしょう。

逆にこの時点でくじけてしまい、再び借金漬けの生活へと戻る人も存在します。過去の自分という悪魔と決別できる人、できない人。その差は何か。それこそが心構えなのです。

心構えは目には見えませんが、何よりも大事なものです。東京湾を出港した船はゆっくりと進みます。しかし船長の心構えいかんによってその到着地点はイギリスになるか、ブラジルになるか、はたまた氷山にぶつかって沈没するか。とてつもなく大きな差を生み出すことでしょう。そうして、その船の船長はあなたなのです。

借金に関する心構え。それは「自分から進んで債務整理を行ったか、否か」です。少しでも借金の返済が苦しいと思った時点で、債務者が自分から進んで司法書士事務所に電話をする。これは言い換えれば「こんな借金生活はイヤだ。あり得ない」と債務者が思っていることと同じです。そうであれば、借金がない生活に戻ったのであれば、債務者だった人にとってはそれが「当たり前」。当然のように借金のない生活を享受できることでしょう。「天の試練」が訪れない可能性も十分にあります。過去の借金生活はいわば一過性の風邪を引いたようなものだからです。

逆に借金の返済に行き詰まった上にリボ払いにしたり、踏み倒しをしたり、サラ金の取り立てに対して居留守を繰り返し、ついに大家から追い出される寸前になって慌てて債務整理をするような多重債務者であれば、借金がなくなった途端に不安を感じる可能性は少なくありません。「こんなに幸せでどうしよう」と不安な気持ちで、日々を過ごしていくうちにまたも借金地獄へ逆戻りする可能性は大いにあるのです。

世の中には「何でこんな目に自分ばかり」と思う人もいるかもしれません。そのときには自分が日々思っていること、目にしているもの、考えている事柄に目を向けてみましょう。問題の答えは外ではありません。自分の心の裡にあるのです。

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