債務整理コラム

あなたの借金癖 実はみんなが知っている その1 〜借りるためならなんでもする〜

突然ですが「一夜漬け」をしたことがあるでしょうか。つけものの話ではありません。テストの話です。中学生の頃、中間テストや期末テストの前、思わず遊びほうけてしまい、気づけばテストの前日といった思いをした人は少なくないはず。なんとか赤点だけは免れようと友人と連絡をして試験に出そうな分野を互いに話しあったり、中にはカンニングペーパーを作ろうとしたりした人だっているはずです。

知人の話で恐縮ですが、遥か昔、試験前にカンニングペーパーを作って制服のズボンのチャックの裏側に仕込んでおいたそうです。そうしてテスト当日、いざテストが始まってそーっとズボンのチャックを下ろしたところ、不意に誰かの視線を感じたそうです。彼が反射的に目を上げると、教壇の上に立っていた中年の女性教師が口を半開きにして、なんともいえない表情で彼を見ていたとのことでした。そこで彼はまた何もいわず、そっと開きかけたズボンのチャックを戻して試験をせざるを得ず、結局追試になってしまったとのことでした。ほろ苦い青春の1ページといったところでしょうか。

テスト前だから勉強しなければならない。そんなことは誰でもわかる話です。でもどうしても、つい顔を背けてしまう。わかってはいるけれど、どうにもならない。人間にはそういう本能があるようです。この心理は何かに似ているとお気づきではないでしょうか? そうです。借金問題です。

債務の返済に行き詰まる人、とくに多重債務者の気質の中にはどうも「中間テストの前の一夜漬け」に似たものがあるようです。借金があるのであれば返さなければならない。本来はわかっているにも関わらず、どうにも顔を背けてしまう。ましてや人からそれを指摘されれば「はいはい、わかっていますよ。うるさいな」と生返事に終始してしまう。中には返済についていわれた瞬間に信じられないほどの『逆ギレ』をし、相手が驚く様を見て悦に入った気分に浸る債務者までいるようです。

借金の返済から顔を背け続ける。これはその瞬間においては一番楽なことでしょう。しかし、債務整理が脳裏を過ぎりはじめた今となっては、それがどんな苦痛をもたらしているのかもほかならぬ債務者ご自身が一番わかるところのはずです。

ところでこのように借金を重ねて行き詰まる多重債務者。国内には一体何人いるかご存知でしょうか。

H22年施行の貸金業法改正によって多重債務者の総数は大幅に減りました。具体的には貸金業法の改正と総量規制の前までの多重債務者の数は、年間200〜230万人程度であったのに対し、法改正の施行後は40〜45万人程度まで減ったという報告があります。
これは一見すると喜ばしいもののように見えますが、実際のところ、この人数が本当であるとはどうにも考えにくいのです。そもそも総量規制とは「サラ金からの借入額を収入の3分の1以下と定める」というものです。しかし誰も彼もが遊興費だの、パチンコだので借金を重ねて破産をするわけではありません。サラ金から借金をする人の中には、夏・冬のボーナスをあてにして子どもの学費を捻出したり、冠婚葬祭や病気の治療費を借りたりする人だってたくさんいるのです。

こういう人は必要なお金を捻出するためなら、がんばって色々な道を探ります。心構えの是非はともかくも、要するに借金をする人の心理とは「お金を借りられない人は、借りるためにはどんなことでもする」というものなのです。そんなところに「年収の3分の1までしか貸しません」などという法律を作ったところで焼け石に水。統計上の多重債務者の数が減ったなどという発表はまるであてになりません。

では、サラ金から借入ができなくなった債務者はどこへゆくか。結局は周囲の知人からの又貸しを受けたり、ヤミ金から借入をしたりすることで借金をするしかありません。これが貸金業法改正によって金融庁が謳い上げている「成果」のからくり。「借金を規制されれば、借金をするために人はどんな手段でも使う」。実際のところ、金融庁側もこれは感覚的にはわかっていることでしょう。わかってはいるものの、その問題に対処できないばかりに現実はこのような事態に陥ってしまっているのです。

ページの一番上へ