債務整理コラム

マイホームは諦めない方がお得?

少子高齢化に伴い、不動産物件の価格が下落の一途を辿っています。加えて長引く不況により、住宅ローンの返済が苦しくなってきた人も跡を絶ちません。

住宅ローンには固定金利と変動金利があります。フラット35で有名な固定金利ですが、この場合、概ねのライフプランが確定している人にとっては大きなデメリットは少ないといえます。たとえば公務員の人がマイホームを購入しようと考えた場合、固定金利型の住宅ローンを選べば、よほどのことがない限り、まず返済をしていくことは可能でしょう。

ただし、固定金利の住宅ローンはやや割高に設定されています。たとえば1000万円の不動産を購入した場合、固定金利の相場は現在3%程度となっています。3%の金利と聞くとあまりたいしたことがないように思われるかもしれませんが、不動産における減価償却期間の30年をめいっぱいまで使ってローンの返済を続けたと考えると、債務総額は約2倍になります。単純にいえば1000万円の買い物をするために2000万円の返済をするということです。これでは少々損をした気になるのも無理はありませんね。

変動金利の住宅ローンはこの逆です。変動金利制とは、市場動向に伴って金利が変わることを指します。変動金利の場合、初期の金利は固定金利よりも安く設定されるのが一般的です。しかし市場が変動することで金利が急上昇することもあり、この場合、ある日突然「金利が上がります」と銀行から通達され、ローンの返済がままならなくなってしまう可能性も否めません。

どちらにも一長一短の面がありますが、そもそも数十年という大規模な買い物を今の時代、行うべきだといえるでしょうか。

これには是々非々の面がありますが、買う価値がないとはいえないというのが一つの答えです。なぜなら、賃貸マンションやアパートなどで月々家賃を支払ったところで、それは何の資産にもなりません。しかし家を持つのであれば、多少価格が下落したとしても少なくともある程度の資産を保持することは可能です。

また、返済ができないのであればマイホームそのものをリースしてしまうという手もあります。意外といえば意外かもしれませんが、東日本大震災以降、東北のある地域では賃貸マンションやアパートを含め、不動産価格を決定する路線価が急上昇しているという話があります。これは東日本大震災の放射能汚染によって避難してきた被災地の人々が近くに家を借りるために空き家を求めたというのが理由の一つとして挙げられています。

また、金銭的な面を除いたメリットとしてマイホームを持つことで家族の絆が強まるということも挙げられます。公的機関が算出している一世帯あたりのモデルケースはやや古く、世帯主の収入が約600万円、伴侶となる女性のパート収入が約200万円、子どもが二人というかたちが一般的です。

今の時勢、これだけの収入のある家族はなかなかいませんが、いずれにせよ、このモデルケースの場合、マイホームを持っても30年間の間に返済ができるように国家およびそれに連動する市場経済は統制されています。

仮に年間800万円の収入が確保できないとしても、マイホームの総額を下げることで不動産を持つことは可能です。そして万一マイホームの返済ができなくなった場合、国家はさらなる救済手段として個人民事再生手続きという債務整理の手段を用意しています。

この個人民事再生はマイホームのみを除外して、他の借金をすべて圧縮するという特殊な債務整理手法です。なぜ、このような手法が存在するのか。これはマイホームおよび不動産にはお金に換算できない価値があることが理由の一つとなるためです。

どうしても借金が返済できず、家族や先祖が代々住み続けてきた土地を手放さざるを得なくなる。これは人によっては泣いてしまうほど悔しく、悲しいことです。また一つの世帯であったとしても、喜びと希望に溢れたマイホームを借金によって奪われてしまうことは同時に家族の離散にも関わる危機を孕んでいます。

不動産における是々非々の面というものは、実はとても複雑で根深い要因が絡みます。そもそも国外において不動産、とくに家の価値というものは本来歳月を経るほどに上がるのです。これに引き換え、本邦における住宅市場は、減価償却に一律されてしまい、30年を経るとその価値はゼロどころか、マイナスにすらされかねないという問題を孕んでいます。

国家は多くの場合、批判の的にさらされます。しかしながら世界動向を巨大な潮流にたとえれば、国家はそれぞれの国民を載せた船であるといえるでしょう。そして少なくともこの日本という船は、他国と比べても安定と洗練を兼ね添えた豪華客船であるといえます。先の不動産市場における減価償却のように、ときにサービスの面で他国を例に批判されることはあるかもしれません。また本邦においては、とかく慣習に縛られがちな面もあります。しかしながら、相対的に見れば、我が国は他国よりも遥かに抜きん出て、しっかりと国民の幸福を考えおり、いざというときの救済措置を用意している船でもあるのです。

現代においてマイホームを持つのは一つの賭けの面があることは否定できません。しかしそれであっても「個人民事再生か。いざとなったらこのような制度もあるんだ」と知っておくだけで、今後のライフプランがより安定的かつ希望に満ちたものとなることは間違いないといえるでしょう。

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