債務整理コラム

希望は借金問題の敵?2

●想像してみてください。借金のない生活を。

「この借金がなければ、今頃は……」と思ったことのある債務者は少なくないはずです。しかしその夢想はなかなか現実にはなりません。司法書士の立場からすると、もうサラ金から借金をするつもりがなく、かつ条件に適合するのであれば、さっさと債務整理を行う方が賢明です。とくに任意整理を行うのであれば、これは端的にデメリットよりもメリットの方が圧倒的に上回ります。それにも関わらず「でもなあ……」となってしまうのが人間の性(さが)。これは致し方のないものです。

今日はのんびりしてしまっているものの、借金の完済に向けてきっと懸命に取り組んでいるであろう「明日の自分」。借金が完済によって晴れて自由の身になって、祝杯を挙げているであろう「将来の自分」。しかし昨日・今日と何も変わることのない明日を迎えて落胆している「現実の自分」。この夢想と現実の落差を埋める手段は一体どこかにないのでしょうか。

結論からすると方法はあります。それも一つや二つではありません。無数にあります。しかし今回はその中でも効果が高いと思しき方法を二つお伝えします。

●一時間前に生きていましたか?

あなたは今この世界に存在しています。では一時間前に存在していたでしょうか。「いいえ」と言うはずがありませんね。では一時間後はどうでしょう? これも「いいえ」と言う人はほぼいないはずです。

では、話題を切り替えて借金に関して質問をします。あなたは今借金がいくらあるでしょうか。胸の中で金額を言ってみてください。その借金は一時間前に存在していたでしょうか。ほぼ全員が「はい」と言うはずです。では一時間後はどうでしょう? これも同様の答えになるはずです。

人はなかなか「時間」で物事を見ることができません。これに対してお金は「今」ではなく「時間」を生きるものなのです。ですから、借金についても時間で見る必要があるのです。借金の額が「今幾らか」も大事ですが、それだけではなく「かつて幾らだったか」を知り、「やがて幾らになるか」を知る必要があります。

この「先取り」感覚が借金問題を効率的に片付けるコツ。お金の扱い方が上手な人は大体がこの「先取り」センスに優れています。ただし、これは当たり前のように「今」を生きている、我々一般人にとって実は結構面倒なことなのです。

例えば借金の返済額の「先取り」と言っても、ほとんどの債務者は現在の残債や毎月の返済額を大体覚えています。それでもその返済額がなかなか用立てできなかったから落胆してしまっているのが実態。

人はできもしないことに取り掛かろうとした場合、急速に胸の内に嫌気が充満します。要するに借金の返済をする気力がなくなるのです。そのような事態に陥らないために債務者がすべきこと。それは「返済のために、今、自分ができそうなことを準備すること」です。これは別に着手する必要はありません。単なる準備として気負うことなく、携帯電話で求人サイトを閲覧してみるもよし、働き口があるのであれば、明日のために作業着を用意しておくもよし、借金の額が多すぎて困っているのであれば債務整理問題を自分なりに調べてみるもよし、なのです。

いずれにせよ、今日準備をしたことで明日はそこから取り掛かることができるはず。大切なことは「時間」で物事を見ること。明日の自分の行動を今日の自分がサポートしてあげる。そのような気持ちで借金問題の解決に向けて取り組んでみることが大切なのです。

●バラバラカードを作ってみよう

借金の返済に着実に取り組めるもう一つの方法。それは「自分にとっての借金」を分解することです。

人の視点は千差万別です。例えば家族みんなで山登りをして山頂から同じ風景を眺めていても、人によって見ているものは全然違います。子どもが森を見れば、クヌギの木にカブトムシがいないかどうかが気にかかるかもしれません。老人がそれを見れば、自身が子どもの頃に見た森と胸の内で比較するかもしれません。花粉症に敏感なお父さんが森を見れば、杉の木から別のものへと植林をしたいと考えるかもしれません。

借金問題もこれと同じ。同じ借金であっても、返済までまだ時間があると考えればのんびりする人もいれば、まるで明日は世界の終わりだとばかりに大至急返済のやりくりを始める人もいます。たまたま借入をしたものの、本当は貯金に余裕がある人は、返済日を待たずに返済を願うかもしれません。逆にまったく貯金も収入もない人は、返済日が来るのが恐ろしくてたまらないかもしれないのです。

借金を構成している要素は一人ひとり違います。連帯保証人への取立てを恐れている人もいれば、取立屋からの脅しまがいの文句を怖がっている人もいます。気が遠くなるほどの支払い回数にうんざりしている人もいれば、金利の高さにキュウキュウしている人もいるのです。

このように同じ「借金」と言う言葉で括っても、その捉え方は誰もが異なるのです。この債務者一人ひとりの「オリジナル」の借金の要素を知るためには、債務者本人が借金をバラバラに分解してみる必要があります。

そのための手段として使えるものがちょっとしたカードに借金問題を書き込むこと。例えば英単語の暗記カードなどに「借金」と聞いて思いつく要素を片っ端から書き込んでみましょう。「取立」や「督促」はもちろんのこと、「脅し」や「怖い」と言った感情的な事柄も連想ワードとして書き込んでみる必要があります。これが「もう思いつかない」となった頃、それらを広げてみるとその債務者個人の「借金」が見えてくるはず。

「借金」を構成する要素は色々あります。借金をした「理由」から、借金に関する「法律」、消費者金融などの「会社」、貸付の「金利」など、挙げてゆけばきりがありません。しかし、このバラバラカードを広げてみると自分の借金に関する構成が偏っていることに気づくはずです。

例えばカードが借金取りからの「脅し」や、返済にかかる「金利」などに重きを置かれている場合、これらが返済に関するネックとなっているのです。複数の消費者金融などが挙げられていれば「多重債務」が足かせとなっているのでしょう。ともあれ、このように自分なりの借金像を知ることが、借金の返済を妨げる本当の原因を見つけることにつながるのです。

ここまで来れば借金問題はもう七割方解決したも同然です。なぜならその人個人の返済の問題点がわかると言うことは、その点だけを改善すれば、後はコツコツと返済をするか、さもなくば債務整理を行なってしまえばすぐに問題は解決するためです。大切なことは債務者が自分の問題を把握すること。借金を通じた自己分析だと思えば良いのです。

●見えないピースをあてはめる

借金の完済とは何もがむしゃらに働くばかりではありません。自分なりの「借金」を知り、適切な対応を行うことで、最小限の労力で毎月の返済額をスムーズに用意することができるのです。ただし、ある債務者が自分なりの借金を分析した結果例えば「多重債務」が毎月の返済に関するネックだとわかった。そのため、おまとめや一本化を図ることで借金の苦痛を大きく軽減しようと試みることにしたとしましょう。この準備や方法そのものは素晴らしいことです。

ここまで来れば問題はほぼ解決。ただし同時に忘れてはいけないことは、解決策としておまとめや一本化などを思いついた場合、その他に必ず「債務整理」も頭に入れておくことです。なぜなら大抵の人は、解決策を「自分にできること」の範囲に留めてしまうためです。

しかし、世の中は病気や冠婚葬祭など、不意の出費で溢れています。せっかく効率的な返済をし始めたにも関わらず、人生の不如意によって再び返済が行き詰まる可能性もけして否定はできないのです。

債務整理と言うものを頭のどこか片隅にでも常に置いておくことで、平時の疑問においては無料の相談窓口として、またあるいは激しい取立や督促に遭って本当に切羽詰まったときの緊急の対策手段として便利に使うことができます。

病気であれば、例えば健康に良い食事や規則正しい生活など、日常でできる健康維持手段から病院での診察や人間ドッグ、入院・手術まで、様々な問題解決手段があります。同様に借金問題についても「自分でできること」のほかに「他人に相談することで円滑に解決できること」の項目を付け加えてゆくことが何よりも大切なのです。

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