債務整理コラム

借金でツイてないとき2「ちぐはぐを正す」

借金問題で「ツキがない」と感じるには「世界」が原因である場合と「自分」が原因である場合の二種類が存在します。今回は「自分」が原因であるケースです。

大手のサラ金業者の人が以前、ぽつんと述べたことがあります。 「借金の返済目的でパチンコや競馬なんかをすると必ず負ける」

感覚的にですが説得力のあるような話です。この業者に関わらず、色々なサラ金業者が似たりよったりのことを口にしているのを幾度か耳にしたことがあります。これはサラ金業界のジンクスと言うよりも、取立屋のほとんどが経験上知っていることのようです。

パチンコや競馬・宝くじのようなギャンブルは「ツキ」の代表格のようなものです。それを鑑みて先のサラ金業者の言葉をよくよく見つめると、これは間接的に「借金はツキを落とす」と言っているのと同義です。

借金でのギャンブルはなぜ失敗するか。理由は単純。焦るからです。勝たなければ借金が返済できない。勝つことでかつての借金のない、もしくは次の返済日までまだ間のある日常になる。元々が勝てる見込みのない中で、必要な金額を満たすため、リスクの高い無理のある賭けに出る。そして負ける。本来ならば当然勝っているべき状況からますます現実は離れ、世界は自分にとってちぐはぐなものとなる。このちぐはぐさを直すため、さらに無謀な賭けに出る。こうして借金だけが残るのです。

ツキの理由などはこんなもの。知ってみれば「なあんだ」と言うような他愛のない理屈ではありますが、さらにこれには原因があります。

一つ、わかりやすい話があります。

ある女性が交通事故で多額の借金を負いました。事故の理由そのものは原付バイクに乗って無理な右折を交差点で行ったためですが、なぜそんな無茶をしたのか理由があります。それは彼女がその日怒り狂っていたためです。

この日、彼女は役所に直談判に赴きました。自分の考えた市政を市長に伝えるためです。何の話題かは知りませんが、彼女が出向いたところで、市長はおろか、役所の窓口の職員ですらろくな対応をしませんでした。それもそのはず、市長はもちろん役所の職員も、これまで会ったことはおろか、名前も聞いたこともない女性の意見など耳を貸すはずもないためです。しかしこの女性の考えは違いました。彼女は、自分は周囲の人達とはまったく違うすごい人だと確信しているらしく、自分の画期的で社会に貢献する素晴らしい意見を、市長が聞いて当たり前だと思っていたのです。当然、役所はけんもほろろな対応に終始しますが、これを彼女は「自分を不当に軽くみられた」と思い、激しい怒りを胸に抱きながら帰途に就くことになったのでした。

彼女にはとくに社会貢献に対する実績はありません。また目をみはるような素晴らしい学歴もなければ、多くの人々を感化させるような行動を起こしたこともありません。しかし彼女にとって自分は大変な能力のある人間であり、周囲はそれを当然認めてしかるべきだと思って止まなかったのでしょう。だから彼女にとってその日は市長が涙を流して感動し、心からの賞賛とともに握手を求めてきてくれるべき日だったのです。しかし現実はどうでしょう。市長どころか窓口の職員ですら、おかしな人を相手にするような蔑みの目で一言二言、蔑むような語調で言葉を投げつけ、後は完全な無視を決め込んだのです。

あるべきはずの喜びが存在しない、このちぐはぐな状況で彼女は原付バイクに乗る最中、ふと交差点のあたりでこう思ったのでしょう。「こんな間違った市政の標識やルールなど守る必要がない」。さもなくば「少々無理な右折をしても、自動車が自分を避けて当たり前だ」と。

かくして彼女はケガとともに多額の賠償を負うハメに至りました。 おかしな人のエピソードに思えるでしょうか。世の中にはこう言う人はごまんといます。

この話のどこが借金問題と絡むのか。それはお金とは周囲からの評価であり、力の誇示と言う側面を持っているためです。女性が高価なブランドを好むのも、男性が高級外車を乗り回すのも自分の力を誇示するためです。もちろん腕力も力ではありますが、やくざのような犯罪者を相手にするのではない限り、この社会は腕力で解決するようにはできていません。

シンプルに考えてみればこれはすぐに理解できるはずです。年収が多い人は羨ましがられます。逆に借金のある人は「自分はこんなに借金がある」と周りに楽しげに告げて回ったりはしないでしょう。そんなことをすれば「ああ、この人は力がないのだな」と軽じられるか、もしかしたら「借金を申し込みに来て、お金と言う自分の力を削ぎに来たのか」と疎んじられるのが関の山だからです。

そう探ってゆくと「借金の返済目的でパチンコや競馬なんかをすると必ず負ける」と言うジンクスはこの辺りに原因があるようです。お金がなくなると周りからの評価は下がります。しかし自分の評価と言うものは早々変わるわけではありません。よほど親しい友人や家族でもない限り、人は借金のある人と大喜びで関わりたがりはしません。例えば借金を負う前までは普通に接していた周囲の人々であっても、債務者の借金問題が発覚するや、露骨な態度に出ることもあるわけです。すると当然、債務者は「世界がこんなにおかしく変わった」とそのちぐはぐさに愕然とします。そうして状況を元に戻すべく無理な意地を張ったり、リスクの大きな話に乗ったりします。もちろんそんなことをすれば状況はますます悪化してゆきます。

この結果がこうなるのです。「借金を負ったらツキがなくなった」

では、ツキを戻すにはどうすれば良いのか。これには二つあります。 一つは今の自分の金銭の額に合った生活をすることです。「自分はすごい」と言う考えを捨てることです。借金を負っているにも関わらず、おかしな背伸びをしたり、見栄を張ったりすればするほどさらにツキは落ちてゆきます。逆に身の丈に合った慎ましい生活をしながらも、当たり前のことをこつこつと続けてゆけば必ずいつかチャンスは訪れます。「自分はすごい、もっともっと活躍できる」と思える時期も来るのです。

もう一つは債務整理をすることです。借金の額が大きかったり、今の生活と比較して返済が苦しかったりすると多重債務に陥ります。もちろん「ツキ」もどんどん落ちてゆくでしょう。そんな事態になるくらいなら、借金を大幅に軽減したり、もしくは借金のないまっさらな身になってゼロからこつこつとやり直した方がずっと得策なのです。

では、いつ債務整理を行うべきなのか。それは「なんだか状況がちぐはぐだな」と感じたときです。もちろん借金の有無に関わらず、状況が思い通りに行かないときは誰にでもあります。しかしこと借金に関して言えば「ちぐはぐ」な度合いがあまりにもひどく、何だか世界のすべてがおかしいと思えるようなときがあるはずです。このときは迷わず債務整理の相談を行いましょう。債務整理の相談は別に費用がかかるものではありません。債務者の状況を客観的に計算し、さほど苦労せずとも借金を自力で返済できそうならばそれを勧めますし、逆に自力での返済が厳しかったり、無理だったりするようなら債務整理をすることを勧めると言うものだからです。

蛇足になりますが、運気やツキと言うものが実際に存在するかはわかりません。世界中の誰もそんなことはわからないでしょう。ただ、ツイてないなと感じるときは、ご先祖さまのお墓参りをしたり、家の掃除をしたり、友人の相談に親身に乗ったりと、身の丈に合ったかたちで、しばらくの間は慎ましく、こつこつと当たり前のことをやりなさいとは昔からよく聞きます。おばあちゃんの知恵袋のようですが、ツキの原理を考えると、なるほどなあと思うところもあるかもしれません。

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