債務整理コラム

借金を負うのは、夜の外灯になるようなもの。

「弱り目に祟り目」とか「泣き面に蜂」と言うことわざがあります。要するに悪い事態に陥ると芋づる式に悪いことが重なると言うものです。借金と言うものは誰の目にもあまり良いこととは言えません。そして借金に関しては不思議なことに「弱り目に祟り目」がとても強く作用します。

「サービサー」と言う業務があります。日本語にすれば債権回収業、要するに借金の取立てを専門に行なっている業者のことです。債権回収には資格が必要で弁護士・司法書士を除くと、業務としてはサービサーしか行うことができません。これは借金の取立は元々が暴力団などが関与していたものであり、この対策のためにサービサーと言う業種が成立したためです。

とは言え、このサービサーが暴力団排除に向けて完璧に機能しているかと言えば、正直少し疑問が残ります。サービサーとしてまっとうな会社組織が運営しているものが世の中では大半が占めていますが、しかし中には必ずしも警察が指定した暴力団ではなくても、そこから僅かなりとも人間的なつながりがあったり、また暴力団に属していなくても負けず劣らずのようなチンピラがサービサーとして勤めている場合もあるのです。何よりも「業務」でない限りは借金の回収は誰もが行えると言う弱みもあります。

さて、まっとうでないサービサーはチンピラのご多分に漏れず、弱いものいじめが大好きです。この場合の弱いものとはもちろん、借金で困っている債務者のこと。しかし、サービサーは「業務」ですので彼らとしても別に個人的な難癖をつけたり、殴る蹴るの横暴を働くわけではありません。彼らだって一応は仕事をこなしているのです。仕事である以上、債務者一人ひとりに取立てをすると言うことは面倒でたまらないのです。このため、いちいち債務者個々人をいびって喜ぶわけではありません。

では、サービサーの中でもたちの悪い者と言うのはどのようなことをするのか。それはチンピラのネットワークを駆使して、甘い汁を吸おうとする者のことを指します。

Kさんは20代の女性。契約社員として事務所をしていますが、勤め先で人間関係のストレスを多分に溜め込んでしまいました。そうしてそれを発散するため、クレジットカードで買い物を始めたのです。買い物などは一度はずみがつくとなかなか度し難いものがあります。この結果、Kさんもいつの間にか債務超過の事態に陥り、借金の返済のために消費者金融に手を出すと流れになってしまったのでした。

しかし、Kさんが負った借金を消費者金融に返すにもそのあてがありません。そうこうしているうちに返済日が迫り、結局返済を滞納した結果、消費者金融から督促状と取立が相次ぎました。しかしKさんにはやはり返済できるあてがないのです。そうしてしばらく月日が経った頃、ついにサービサーが自宅を訪問してきたのでした。

「Kさん、貸した分のお金、どうやって返すんですか」
Kさんとしては返事のしようもありません。
「だんまりですか。逃げても利息が膨らむだけですよ」
さすがに取立に慣れているらしく、サービサーは事務的な口調で次々と述べてきます。
「まあ、返済しないなら返済しないで結構。後で告訴状が届くと思いますが」
訴えられるとまで言われてさすがにKさんとしは気が気ではなくなりました。
「いえ、ちょっと待ってください。何とかしますから」

サービサーはわかっているとばかりに頷きます。
債権回収業の手法と言うのはある程度確立されており、債務者のこの言葉が次のステップを示しているのです。

「なるほど。で、どう返すのですか」

サービサーは「誰かから借金をしろ」と言うようなことは言えません。あくまでも債務者が「自発的に」返済案をだしてくれることを待つしかないのです。しかし、Kさんとしては借金ができる相手がいません。初めは両親からの借金を考えたものの、買い物をしすぎて借金が返せなくなったなどと言っても親は相手にはしてくれないと思ったのです。

Kさんは困り果て、泣きそうな顔でうつむいてしまいます。それを見たサービサーは大きくため息をつきました。

「困りましたねえ」

本来、まっとうなサービサーならばここで「回収できる限りの額」もしくは「借金の減債」を提案してきます。なぜならサービサーとは入札で債権を買い取るため、ある程度借金を値引きしたとしても、それでも一応は黒字になるためです。

しかし、このサービサーは違いました。

「これは個人的な提案なんですが、お金をどうしても返せないと言うのなら、私の個人的な知り合いに口をきいて、給料の良い仕事を斡旋しますよ」

Kさんとしてはとりあえず話を聞くだけ、と言ったかたちで耳を傾けました。内容は案の定、風俗店の店員です。Kさんとしては絶対に断りたいところでしたが、サービサー側の「やるのかやらないのか。やらないならどうやって借金を返すんだ」とのしつような言葉に、ついに相手の提案を呑まざるを得なくなったのです。

こうしてKさんの人生は大きく変わってしまいました。
サービサーは会社員です。このため、どれだけ働いてもお給料は大して変わりません。歩合給のところもありますが、一件債権が回収できたら数千円と言ったかたちになります。それではサービサーとしては「うまみ」が少ない。そこでこの悪質なチンピラは自分の業務を逆手に取ってKさんを働かせることにしたのです。もちろんサービサーには大きな紹介料が入ります。またサービサーの会社もノルマを達成することができます。彼としては若い女性の債権を回収すると言うのは笑いが止まらない仕事と言えるでしょう。

このように借金を負った人間には悪い人間がさらに相手を貶めようと近寄ってきます。今回はサービサーと言う業務の皮を被った悪人についてお話をしましたが、悪人はサービサーと言う業種にのみ隠れているわけではありません。お金で苦しむことは借金の返済そのものはもちろんのこと、夜の外灯のように有象無象の害虫をわらわらと寄せ付けるのだと言うことを肝に銘じておかねばならないのです。

借金を負った場合に大切なことはたったの二点。

  1. なるべくデメリットを少なく
  2. 借金をなくすこと

ただのこれだけなのです。ここから外れないように重々お気をつけください。

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