債務整理コラム

夜逃げと自己破産、どちらがお得か

私たちの日常はゆっくりと流れています。小学生の時代を思い出してみてください。毎日毎日がさほど大きく代わり映えのしないうちにいつの間にやら中学生へ、中学生から高校生へと変わっていたのではないでしょうか。そうしてあるとき大人になった自分をふと顧みて「いつの間にかこんなところに来たんだな」と感慨深い思いをしたこともあるのではないでしょうか。

お金についても実はこれと同じです。アメリカのニュースなどではときどき数百億円の宝くじに当選して文字通りのアメリカンドリームにありついた話題などが出ますが、これは異例中の異例。だからこそわざわざニュースで大きく取り扱われるのです。金銭面において私たちの日常はゆっくりと推移しており、そのため、自分がお金持ちなのか、貧乏なのか、はたまた中流なのかもなかなかはっきりとは感じられません。

しかし、借金の返済に四苦八苦すると言うのははっきりと申し上げてお金に困っている証なのです。どれほど見た目に華美な生活を送ろうが、社員何十人を抱える中小企業の社長であろうが、毎月のやりくりに頭を悩ませる以上はお金に困っています。

そのような状況が続き、ついに返済に滞るようになると多くの人はパニックに陥ってしまいます。さもありなん。毎日のように督促状が届き、取り立ての電話が相次ぎ、目の前の借金を減らすためにさらなる借金を繰り返す。このような状況になってしまえば、自分の日常が何なのかまったくわからなくなってしまうのも無理はありません。

しかし、その心労から深刻な病気に罹ってしまったり、また自殺が脳裏を掠めるなどと言うことは愚の骨頂。お金に厳しい人の中にはお金について「命の次に大事なお金」と述べることもありますが、そんな彼らであってもお金よりもやっぱり自分の命の方が大事なのです。

では、お金がなくてどうやって命を長らえば良いのか。このとき、きちんと物事の筋道を考えられない人は夜逃げをします。しかし夜逃げは「まっとうな」行為ではありません。まっとうな行為でないとは、社会に対して過去の精算をしていないと言うこと。そのため、夜逃げをした人は「まっとうな」生活にはなかなかありつきづらいのです。

アメリカでは多くの人が起業をし、そうして失敗をします。しかし、彼らは例え失敗をしたとしても堂々としています。それどころか失敗をした後、会社の就職試験に赴く際、履歴書に自分が起業をしたこと、そして失敗したこともしっかりと書き込んでいるのです。なぜなら、アメリカでは失敗をすると言うことは、社会に対して果敢にチャレンジをした証として、むしろ褒められることであるためです。

起業とはある意味、ババ抜きやポーカーを複雑にしたようなものです。どれほど高い能力と多くの資金を持って起業したとしても運次第で失敗することもあります。そのため、仮に失敗をしたとしても、その失敗について、理由を深く詳細に話すことができるのであれば、これは一般よりも能力の高い人とアメリカの企業はみなすのです。しごくまっとうな理屈です。

これと比較して夜逃げをした人はどうでしょう。ババ抜きにせよ、ポーカーにせよ、負ける寸前の古いカードを持ったまま、どこかに消えてしまったら、同じ場でゲームをしていた人たちは誰もが困ってしまいます。もちろん雲隠れした先で新しいゲームにありつくこともできるでしょうが、仮にその場で大成功を収めて周囲に名前が知れてしまえば、やがては過去に夜逃げした関係者たちがどっと押し寄せて過去の精算を迫ってくるでしょう。つまり、夜逃げをした人は、かつて夜逃げをしたとき以上の成功を収めることはできないのです。

ならば、お金がなくてにっちもさっちも行かない人はどうすれば良いのでしょうか。すんなりと出る答えは債務整理ですが、借金で首が回らないと思った瞬間に債務整理の打針が取れる人と言うのは、よほど理知的な思考の持ち主です。何も知らない一般の人は、借金の整理は自己破産であり、そうして自己破産とは人生の落伍者のレッテルを貼られると言うような考えに囚われているためです。

自己破産の恐れる理由はそのデメリットにあります。しかし、多くの人が自己破産のデメリットを知らずに単に自己破産を恐れているだけだと言えます。しかし誤解を恐れずに言えば、多重債務で借金が返済できそうもない人が自己破産で生じるデメリットはわずかに二つきりです。

・5〜7年程度、クレジットカードが作れないこと
・免責を受けてから7年間は自己破産できないこと

他にも自己破産直後は99万円までしか現金を持てないことなど、細かなものは幾つかありますが、そもそも自己破産をする人のほとんどは100万円も手元にはもっていないのですから、デメリットと言えどあまり意味のない要件なのです。

詳細を見てみましょう。クレジットカードが持てないことはどうでしょうか。カードなしで一週間生活をしてみたらわかります。やってみればわかりますが、別にどうと言うこともありません。ショッピング中毒のような人には酷かもしれませんが、それ以外で不便なことなど実はほとんどないのです。今の時代、必要なことは全部コンビニで済ませられます。クレジットカードとはそもそもが形を変えたサラ金カードのようなもの。借金のないクリーンな生活で人生を再建させようと言う人が、サラ金カードを必死に持ちたがる方が異常なのです。

また、免責を受けてから7年間は自己破産しないことと言う点も同様です。人生において二度も三度も破産すると言うのはちょっと普通では考えにくいことです。これは大体が遊興費などで再び借金生活に逆戻りをさせないための予防措置だと言えます。

いかがでしょうか。自己破産と言うものは、実は知れば知るほど、メリットだらけの良い行為なのです。もちろん国としては自己破産を通じて人生を再建し、成功した人生になったら沢山税金を納めて欲しいと考えています。だからこその救済措置。こう考えると自己破産はとてもポジティブな制度だと思えるのではないでしょうか。

夜逃げや自殺を考えるくらいなら、まずはあがいてあがいて存分に戦ってみましょう。そして「いざとなったら破産すれば良い」とポジティブに捉えてみれば、何度でも人生に対して挑戦できるはずです。

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