債務整理コラム

良い借金 悪い借金

不思議なことに国家であっても、法人であっても、個人であっても、規模は違えどお金を使う仕組みそのものに違いはありません。例えば借金問題に絡めて考えると、ギリシャでは少し前に財政危機が起きました。あれなどはその典型と言えるでしょう。ギリシャは借金を繰り返して安穏としていた挙句、問題が発覚するや、返済なんてもう知らないと開き直りを決め込んだのです。その結果、連鎖倒産を危惧して世界中が右往左往することになりました。

そもそも借金と言うものはあまりおすすめできるものではありません。以前のコラムでもお話をしましたが、本来、借金とは他人からお金を借りるのではなく、他人の手を通して自分の未来からお金を借りてくる行為であるためです。しかし、借金は全部が全部悪いものではありません。それが本当に悪いのであれば世界中で借金は禁じられているはずです。悪い面もあるけれど、良い面もあるからこそ、借金と言うシステムが残っているのではないでしょうか。

では、良い借金とは何でしょう。それは「繁栄」につながるものです。繁栄の定義は置いておいて、これを「お金の儲かること」に絞れば答えは簡単です。例えばAさんが素敵な自動車を見つけ、どうしても欲しいので500万円の借金をして買いました。これは「お金の儲かる繁栄」にはつながりません。悪い借金です。しかしAさんはあまり自動車を使わないため、Bさんに毎月15万円で貸し出します。Aさんは毎月10万円ずつ返済しているため、何もせずとも5万円が入ってくる計算になります。これは良い借金だと言えます。

翻ってみて、先のギリシャ問題はどうでしょう。ギリシャは国民の六割が公務員です。何も生産しないに等しいです。さらに国民性は陽気ではあるものの、勤勉であるとはあまり言えません。言い換えればこれは「繁栄」につながる要素が少なく、今日明日が楽しければそれでいいと言う考え方に国民が染まっているのだと言えます。そうして、嘘をついてまで周辺各国からお金を借り、いつか行き詰まる借金問題を放置し続けてきた結果が今回のギリシャ問題に結びついたのです。

ある歴史家いわく、ギリシャは過去2000年間の間に40回も破産していると言います。神話のような時代から破綻してきたと言うのは、ある意味で途方もない国にも思えますが、世界恐慌が起こるとされる50年に一度ずつ破産していると考えると「ああ、破産癖のある国柄なのだな」と意外にすんなり頷けます。今回はユーロ圏の各国が借金の肩代わりを引き受けてくれましたが、近い将来また同じことは繰り返されるでしょう。

人の振りみて我がふり直せと言います。では、今度は私達日本人の生活について考えてみましょう。本来、事故や病気が起きない限り、私たちの生活は金銭的に破綻しにくいようにできています。なぜならそれはお役所が、私達に気づきにくいところでそのように計算しているためです。その理由はなるべくたくさん働いてもらい、その分ぎりぎりまで税金を取りたいためです。

詳細な例を挙げてみます。日本人のモデルケースとしてAさんと言う男性を例としましょう。

Aさんが大学を出て企業に就職すると、給料の中から毎月所得税・各種年金・健康保険料が天引きされます。残りは生活費となります。生活費の中には家賃・水道光熱費・遊興費などの他に酒税やたばこ税・消費税も入っています。また数年置きには自動車を買い変える計算のため、各種自動車税を支払います。さらに結婚をして家を買ったら、住宅ローンとは別個に、今度は固定資産税がかかります。家族を養うために毎月懸命に働き、やがて定年すると今度は退職金に源泉課税されます。年金を貰いつつ、それでは足りないと貯金を削りながらその後は生活し、そうして老衰すると最後に贈与税や相続税がかかるのです。 政府の計算では、このモデル家族は概ね年間600万円前後を稼ぐ家庭として計算されています。そして最後にAさんが亡くなった後、子孫にはほとんど何も残らないようになっています。つまりモデル家族はちょっとした贅沢も含めて、その生涯で生み出したお金がほぼ全部生活費と税金で消えてしまうよう、うまく調整されているのです。

お金がほとんど残らないと言うのは寂しい話ですが、しかしこれには是々非々の側面があります。つまり、お金が残らないかわりにその分の税金を用いて、仮にAさんが大病や事故に遭ってもそれを救済するためのセーフティネットが貼られているのです。また、万一借金で行き詰まっても法律では一定期間のペナルティと引き換えに、借金をなくして人生を再起させてゆけることも含まれます。これこそがほかならぬ債務整理なのです。

債務整理は「繁栄に至る良い借金」に関してペナルティを設けるかわりに「滅亡に至る悪い借金」を帳消しにし、そのかわり、国が定めたプラスマイナスゼロの道のりを安心して歩んでゆけると言うことにほかなりません。

他人様の国を悪く言うわけではありませんが、もし自分が「悪い借金」でギリシャのように周囲に迷惑をかけてしまうようであれば、思い切って債務整理をするべきです。なぜなら債務者はそれまでしっかりと税金を払い、そのかわりセーフティネットに留まれる権利を得ているからです。ですので、債務整理を終えた後、しばらくの間は助走期間として、国の定めた安心の道のりを歩みましょう。数年間クレジットカードが使えないなどと言うのは言い訳に過ぎません。国が借金生活に戻らないように保護してくれているとプラスに捉えるべきです。すべてをゼロからやり直せる心構えができたら、胸を張って債務整理を行いましょう。借金のまったくないクリーンな生活に数年間身体をならし、もう問題ないと誰もが思う頃「繁栄に至る良い借金」ができるようになるはずです。

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