債務整理コラム

パートナーであると言うこと

インフォームドコンセント(以下IC)と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは病院での治療において治療内容や方法についてしっかりと説明をし、患者さんに理解してもらった上で、その治療方法にお互いに合意することを示すものです。端的に言えばICとは「何をするか」、それは「どうやるのか」、それで「どうなるのか」、それには「どれくらいの期間と費用がかかるのか」と言うことを前もって患者さんに理解してもらうことだと言えます。

私は債務整理もかくあるべきだと思っています。弁護士だから、また司法書士がこう言ったから債務者は諾々(だくだく)と従うべきだと言うのではなく、債務整理の専門家だからこそ、常に債務者の目線に立ち、彼らにしっかりと理解を求めなければなりません。なぜなら債務者であるお客様に対し、借金と言う名の病巣をどう摘出し、それによってどう変わるのかまでしっかりと話をして納得してもらわなければ、お互いに困ることになるためです。それどころか、もしも後々においてお客様が納得の行かない終わり方になった場合、その行動は後々に自分の首ひいては法曹界全体の首を絞めかねません。

これは言い換えれば債務者と債務整理業者が二人三脚で息を合わせないとならないと言うことを示しています。患者さんと医師がワンセットであるように、債務整理業者と債務者はワンセットでなければならないのです。万一にも「この業界の人間は信用ならない人たちばっかりだ」と債務者に言われるようになってしまっては、私たちとしては情けない限りです。

これをひっくり返してみましょう。私はサラ金業者と話をしたこともあります。突然こう切り出すとびっくりするかもしれませんが、サラ金業者と言うものは私たち債務整理業者にとっていわゆる「敵」のような位置づけであると同時に、交渉相手でもあるのです。そのため、彼らと会話をすることは私たちにとっては必要不可欠な業務なのです。

とは言え、彼らとはなあなあの関係ではいられません。あくまでも彼らにとって私たちは煙たい存在であり、こちらから連絡をすると顔をしかめられるような交渉相手でなくてはならないのです。

とても大まかではありますが、交渉と言うものは3つの枠組みによって成り立っています。すなわち「感情」と「論理」と「利害」です。この3つをつぼに入れてどろどろに溶かし、債権者と債務者のいずれもが納得するかたちになるところを探り当てて引き上げると言うことが債務整理の交渉なのです。そして、この交渉のやり方こそが債務整理の一番の腕の見せ所。しかし債務整理に慣れていない弁護士・司法書士はどこまでこの交渉をすべきかがわからないため、すぐに妥協して引き上げてしまい、結局債務者が泣きを見ると言うことが往々にしてあるのです。

では具体的にはどのような交渉方法を取るのか。これには幾つかの種類がありますが、今回は一例として徹底的に居丈高に出るものをお話しましょう。これは「この金額だけ支払います。それ以上は不可能です」であったり、また「決裂ですね。法廷でお会いしましょう」と言うような方向性に行くものです。相手も譲歩しないと債権回収ができない上、余計な手間と費用がかかるため、大体においては応じます。また応じる最低限のラインと言うものがあるため、そこから幾ら減額交渉できるかも求められるものとなります。逆にこちら側もある程度譲歩したらと思うかもしれませんが、実のところ、こちらが一歩下がってもろくなことがありません。あくまでも向こうに譲歩させることが求められるのです。

なぜ今回このようなお話をしたのか。それは先に述べたようにICの概念を債務整理に持ち込む必要があると考えているためです。そもそもICはなぜ必要なのかを述べると、これはお客様にとっての「知る権利」を満たすためのものだからです。後々になって「こんなはずじゃなかったのに!」と言われることほどまっとうな債務整理業者にとって辛いことはありません。あくまでも私たちはパートナーです。ですので、お客様が債務整理を考えておられるようでしたら、まずは思う存分、業者に対して「知る権利」を行使していただきたいと言うところが私としての本音です。逆に言えば、どこかの債務整理業者に疑問点を尋ねて答えられなかったのであれば、そこには答えられないなりの理由が存在します。そのようなところは外してしまったほうが賢明だと言えるでしょう。

ページの一番上へ